宅建士試験に合格した後は?
宅建士試験に合格後のプランについて
例年10月第3日曜日に年1回行なわれて宅地建物取引士資格試験(以下「宅建士試験」という。)の合格発表が先日ありました。
令和5年度宅建士試験の合否判定基準は50問中36問以上(登録講習終了者は45問中31問以上)の正解でした。
合格者の中には宅地建物取引士(以下「宅建士」という。)に登録し、宅地建物取引士証(以下「宅建士証」という。)の交付を受けたいという人もいるでしょう。
宅建士証が交付されれば、不動産業に勤務している従業員さんは、専任の宅建士なのか一般の宅建士なのかで待遇が異なるでしょうが、だいたい1~3万円程度の資格手当が得られ、多少給料が増額するでしょう。
また、不動産業に勤務している従業員さんの中でも、独立開業を夢見ている人は、この合格と宅建証交付をキッカケに、独立開業への準備を進めるという人もいると思います。
そのような中、未だ宅建業を営んでいない事業者さんが新たな新規事業として宅建業と営むために、宅建士試験の合格者を採用することを考えるでしょうし、すでに宅建業と営んでいる事業者さんは、新たな宅建士を採用することによって、宅建業に従事する従業者の人数を増やすキッカケとなったり、また、支店を増やして事業エリアの拡大によって新たな市場への進出を予定することができるでしょう。
とにかく、合格発表後のこの時期は、宅建業に関与する事業者さんや従業者さんにとっては、いろいろな変化が伴う時期といっても間違いではないでしょう。
我々行政書士も、この変化の時期に合わせて、種々のプランを用意しています。
宅建士試験が宅建士登録をする場合(愛知県の例)
宅建士試験合格後は、受験した試験地の都道府県知事の登録を受けることができます。受験した試験地と異なる都道府県で登録を受けることはできません。
例えば、愛知県で受験をし合格をした後、兵庫県へ住所を移転した場合、兵庫県で登録を受けることはできず、受験をした愛知県で登録を受けることになります。
宅建士登録は任意です。今後、宅建士として宅建業者の従事するなどの予定がない場合など、特に不要であれば宅建士登録をする必要はありません。
登録は各都道府県の登録窓口で行います。各都道府県の登録手続は、各都道府県のホームページに記載がありますので参照ください。
愛知県の場合は、一般的には以下の必要書類をご用意いただくことになります。
- 登録申請書(様式第5号)
- 誓約書(様式第6号)
- 身分証明書
- 登記されていないことの証明書
- 住民票
- 宅地建物取引士試験合格証書
- 顔写真 1枚
- 愛知県収入証紙(37,000円分)
- 登録資格を証する書面
上記の必要書面最後にある「登録資格を証する書面」は、実務経験の有無によって異なります。
実務経験が申請時から過去10年以内に2年以上ある方は、実務経験証明書(様式第5号の2)及び従業者名簿の写しが必要となります。実務経験証明書はご自身で作成しても問題ありませんが、従業者名簿の写しは、現在の勤務先または以前の勤務先から発行してもらう必要があります。ここで、以前の勤務先との関係が良好でなく従業者名簿の写しを交付してもらえない場合、この実務経験の証明ができなくなります。
実務経験がない場合、または、実務経験の証明ができない場合は、登録実務講習を受講し、登録実務講習修了証を得て、それを「登録資格を証する書面」とすることができます。登録実務講習は登録実務講習実施機関が実施します。登録実務講習実施機関一覧は国土交通省のホームページにその記載があります。
登録実務講習は、受験した試験地と異なる都道府県で受けることができます。
上記の必要書面が揃い、宅建士登録の申請を行う場合、本人申請でも代理人申請でも、どちらでも問題ありません。代理人申請の場合でも、委任状は不要です。
申請後、登録までの標準的な日数は約30日間から40日間(土日祝祭日などは含みません。)です。登録完了後、登録通知のハガキが送付されます。
試験合格後、実務経験のある人が即登録申請を行ったとしても、登録が完了するのは翌年の1月に、実務経験のない人が登録申請を行う場合は登録実務講習の受講後に登録申請を行うことになるので登録が完了するのは翌年の1月下旬から2月上旬になるのではないかと思います。
宅建士登録と宅建士証の交付申請は別?(愛知県の例)
よく、宅建士登録をすると自動的に宅建士証が交付されるのか?という質問や解釈がありますが、宅建士登録をしても自動的に宅建士証は交付されません。
行政書士は、試験合格後に登録をすると行政書士として登録され行政書士証票が交付されますが、これとは異なります。
宅建士の場合、宅建士登録後に宅建士証の交付申請をすることで、初めて宅建士証が交付されます。
ただし、宅建士登録をした人が無条件に宅建士証が交付されるわけではありません。
愛知県の場合、資格登録済みで、試験合格後1年を経過している人が宅建士証の交付を希望する場合、愛知県知事が指定した以下の団体の実施する宅地建物取引士法定講習の受講が必要です。
- (公社)愛知県宅地建物取引業協会
- (一社)不動産協会 宅建法定講習センター
- (公社)全日本不動産協会愛知県本部
この場合、宅建士証は、座学講習の場合は法定講習修了時に交付され、Web講習の場合は、受講最終日の翌日に交付されるようです。これとは異なり、資格登録済みで、試験合格後1年以内の人は、法定講習の受講は不要です。
法定講習の受講が不要は人は、宅地建物取引士証交付申請書及び添付書類を(公社)愛知県宅地建物取引業協会へ提出します。この場合、宅建士証は、交付申請書の提出から約2週間後に交付されます。
宅建士証を手にしてはじめて「重要事項説明(35条書面)」「重要事項説明書(35条書面)への記名」「契約書(37条書面)への記名」など、宅建士にしかできない業務が可能になります。
稀に、宅建士の登録により業務が可能となる記載のあるサイトを見ますが、そうではなく、宅建士登録に加え宅建士証の交付により業務が可能となることをご理解ください。
宅建業に勤務していない人が合格した場合
宅建士登録の登録申請書と宅建士証の交付申請書には、それぞれ「業務に従事する宅地建物取引業者に関する事項」を記載する欄があります。すでに宅建業にお勤めの人は、この欄に勤務先の宅建業者の商号又は名称と免許証番号を記載するのですが、宅建業に勤務していない人はどうなるのでしょうか?
そもそも宅建業に勤務していない人は宅建士登録や宅建士証交付ができないのではと考える人もいるかもしれませんが、宅建業に勤務していなくても宅建士登録や宅建士証交付は可能です。
その場合、「業務に従事する宅地建物取引業者に関する事項」を空欄にして申請すれば問題ありません。
専任の宅建士または一般の宅建士
上記のとおり、宅建士登録の登録申請書と宅建士証の交付申請書には、それぞれ「業務に従事する宅地建物取引業者に関する事項」を記載する欄がありますが、これはあくまで、宅建士である本人に登録される情報です。これとは別に、宅建業に勤務している場合、勤務しているご本人ではなく、その勤務先の宅建業者が登録すべき事項があります。
すでに宅建業に勤務している場合は、その勤務先に備え付けられている「従業者名簿」に宅建士となった人の記載があるので、その「宅地建物取引士であるか否かの別」の欄に○印と記載することになります。
稀に、専任の宅建士の場合は○印を記入し該当しない場合は×印を記入するとの記載あるサイトを見ますが、そうではなく、専任であるか否かに関わらず宅建士である者に○印を付けます。
ここで「専任」という言葉が出ましたが、宅建士には、専任と一般の2種類の宅建士があります。
専任の宅建士というのは、宅建士試験合格者であればすぐにわかると思いますが、宅建業を営む事務所(宅建業者)に常勤して、専ら宅建業に従事する宅建士をいいます。ここでいう「専ら」とは「常勤性」と「専従性」を有するか否かで判断されます。宅建業免許申請における専任の宅建士の常勤を証明する書類に、勤務先の会社名がある社会健康保険の保険証の写しを用いることが多いです。
この専任の宅建士を、勤務先の宅建業者が増員したとなった場合、「専任の宅地建物取引士の変更(就任、退任、氏名変更)」をする必要があります。これにより、その宅建業者には、専任の宅建士に関する事項が変更され、変更後の専任の宅建士の人数によって宅建業の業務に従事する者の人数が決定されるという効果があります。宅建業者は1つの事務所につき、専任の宅建士1人に対し5名まで宅建業の業務に従事する者を置くことができます。同一事務所に専任の宅建士が2名いる場合は10名まで宅建業の業務に従事する者を置くことができます。
専任とは異なり、一般の宅建士というのは、専任の宅建士の要件とされていた「常勤性」と「専従性」を有しない宅建士をいいます。一般の宅建士が宅建業者に在籍する場合、特に宅建業者が何かの免許変更届をする必要はありません。一般の宅建士は、宅建業の業務に従事する者と同等の存在となります。
勤務先の宅建業者を離職し宅建業を独立開業をする場合
宅建士証のない人が代表者として宅建士試験に合格した人と一緒に独立開業する場合
同一都道府県内に支店を新設する場合
他の都道府県に支店を新設する場合
まとめ
宅建士試験に合格後、宅建士登録とすることが可能となりますが、登録が不要の場合は、特に宅建士登録をする必要はありません。
宅建士証が欲しい人は、宅建士登録と併せて宅建士証交付をすることとなりますが、宅建業者へ勤務していない人であっても宅建士証交付は可能です。
宅建士証の交付を受けた人は、勤務先がない場合は何ら届出等は不要ですが、勤務先が宅建業者の場合は、宅建業者側で手続きが必要となります。
まずは、従業者名簿の「宅地建物取引士であるか否かの別」の欄に○印と記載し、専任の宅建士に限り、「専任の宅地建物取引士の変更(就任、退任、氏名変更)」をすることとなります。
一般の宅建士が勤務する場合は、従業者名簿の記載のみで足ります。
宅建士試験に合格した人が独立し宅建業を営む場合は、宅建業免許の新規申請をします。
宅建士証のない人が代表者として宅建士試験に合格した人と一緒に独立開業する場合は、代表者と専任の宅建士とを異にする宅建業免許の新規申請をします。
このほかにも、宅建士の就任・退任や、支店の新設、本店とは別の都道府県に支店を新設する場合など、宅建士に関わるいろいろなケースに応じた申請や届出をする必要があります。
当事務所では、宅建業免許に関し、どのような場合でも、柔軟に申請・届出が可能です。
もし、宅建業免許または宅建士登録に関する申請・届出についてご不明点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。