自動車の個人売買後の手続き方法について
自動車の個人売買は、ネットオークションやフリマアプリなどの利用で発生するほか、相続後やローン終了後の売却など種々の原因により発生しうる私生活上身近に存在する法律行為といえます。
この記事は、個人売買の発生原因となる法律行為についての詳細に触れるのではなく、その後の手続きについてお伝えしたいと考えております。
また、自動車売却後に発生するかもしれない所得税などの税金問題(課税されるケースなど)についてもここでは触れませんので、別途、ほかのサイトを検索されることをお勧めします。
さらに、自動車の名義が所有者である販売店のままの所有権留保の場合も、この記事では触れておりません。
発生原因別の手続きついて
発生原因別については大きく2つを確認していきます。
個人間の売買や譲渡について
個人間の売買の場合、自動車の名義が売り主から買い主に変わります。
この個人間にもいろいろなケースがあると思われます。
家族間で名義を変える場合
例えば、家族が運転免許証の自主返納をしたことにより今ある自動車をほかの家族に譲り渡す場合などが考えられると思います。
家族間の場合、考えられるのが、譲渡人(旧所有者)と譲受人(新所有者)が同じ住所の場合で、車庫の変更が伴わない場合は車庫証明が不要です。
ただし、家族間の場合であっても同居していない、または、同居していても名義変更と同時に車庫を変更する場合は、「車庫証明」が必要となります。
当然ですが、車庫証明の要否に関わらず「自動車の名義変更」は必要です。
友人・知人間で名義を変える場合
例えば、ある人が自動車を新しく購入するからと、今乗ってる自動車を友人・知人に譲り渡す場合などが考えられると思います。
この場合、通常は譲受人(新所有者)の「車庫証明」と「自動車の名義変更」が必要となります。
他人から名義を変える場合
ネットオークションやフリマアプリなどの利用により自動車を購入した場合が考えられます。
この場合、仲介をした販売店が名義等の変更手続きを行ってくれるのであれば、その指示に従うことで対応ができると思います。
しかし、仲介をしたサイトなどが一切の手続きを行ってくれない場合、売買契約の当事者間で対応せざるを得ないことになります。
この場合、自動車の購入者の「車庫証明」と「自動車の名義変更」が必要となります。
相続の発生について
相続の場合は、自動車の名義が被相続人(亡くなった人)から相続人に変わります。
この場合、遺言書があるのか、遺言書がない場合相続人が何人いるのか、これらを名義変更の手続き前に調べなければなりません。
相続発生時の遺言書の有無、相続人の調査については別記事でお伝えできればと思います。
これらの調査の結果、もし受遺者(遺言によって財産を受ける人のこと。以下同じ。)または相続人が1人の場合は、その1人への「自動車の名義変更」が必要となりますが、その際、車庫証明の要否については「家族間で名義を変える場合」と同じ考えで判断できます。
もし受遺者が複数の場合、自動車を共有の名義とする手続きが必要です。※ 遺言書と異なる遺産分割をして単有名義にする場合については当事務所では取扱いがありません。弁護士さんへの相談をご検討ください。
もし相続人が複数の場合、その者同士の協議により単有名義にする場合はその1人への「自動車の名義変更」が必要となり、共有名義とする場合は共有名義とする手続きが必要となります。
手続きの順番について
自動車の名義変更の必要書類には、新所有者の車庫証明(警察署発行で40日以内のもの)が含まれていますので、車庫証明の手続きを先に行う必要があります。
ただし、上記にあるとおり車庫証明が不要な場合、軽自動車の場合で保管場所届出が不要な場合、軽自動車以外でも適用地域以外の場合は、車庫証明の手続きが不要です。
車庫証明について
車庫証明(正式名称:自動車保管場所証明)の手続きには、2つの言葉の意味とその場所を確認する必要があります。
2つの言葉には、「使用の本拠の位置」と「保管場所の位置」があります。
使用の本拠の位置と保管場所の位置について
使用の本拠の位置とは、個人の場合はその住所地、会社の場合はその所在地等といいます。
保管場所の位置とは、24時間車が出入りすることができる駐車場又は空き地等といいます。これに時間貸しの駐車場は含まれません。
そして、保管場所の位置は、使用の本拠の位置から直線で2㎞以内である必要があります。ルート検索による実移動が2kmではありません。
この距離についてですが、特例措置により、特定の車両については2㎞以内である必要がない場合があります。詳細はお問い合わせください。
所在図及び配置図について
この使用の本拠の位置と保管場所の位置は、車庫証明の申請の際に必要な「所在図及び配置図」の所在図で証明することになります。
所在図には、使用の本拠の位置と保管場所の位置との間を直線で結び、その距離を記入します。
警察署には、4枚複写となっている自動車保管場所証明申請書と一緒に「所在図及び配置図」がありますが、これを必ず使用し手書きで記入しなければならないということはありません。
GoogleマップやYahoo!地図などを使用してプリントアウトして添付する方法でも問題ありません。
保管場所の使用権原について
保管場所(車庫)は、いろいろ方法により確保されていると思います。
保管場所の土地・建物が自己所有の場合、他人所有の場合、共有の場合などが考えられます。
自己所有の場合
例えば自宅と同じ敷地にある駐車場や、自宅とは離れた駐車場など、それら駐車場が自己の名義となっている場合です。
この場合、ご自身で、保管場所使用権原疎明書面(自認書)を作成してください。4枚複写となっている自動車保管場所証明申請書と一緒にあります。
他人所有の場合
近隣の駐車場を借りる場合や、自己所有や賃貸に関わらずその居住マンションの敷地内にある駐車場など、自己所有の場合以外のケースです。
この場合、駐車場の所有者、または、駐車場の敷地を管理している管理会社に保管場所使用承諾証明書を作成してもらってください。
多くが3,300~5,500円ぐらいの発行手数料が必要となる場合があります。
あるところでは、車庫証明取得のためだけの駐車場契約とならないよう、発行手数料のみならず、あらかじめ6カ月の前払い賃料を求めてくる所有者・管理会社があります。
ひと昔前、湘南や神戸ナンバーなど、人気のナンバープレートが欲しいための駐車場契約を防止するために1年の前払い賃料を求めるケースがあると聞いたことがあります。
共有の場合
共有者全員の署名のある保管場所使用承諾証明書を作成してください。
申請のための日時について
警察署での申請は、窓口にて行われています。
管轄の警察署へ出向き、申請書の提出した中3日後または中4日後に、証明書が交付されます。
これら警察署での申請受付や交付は、平日の限られた時間帯でのみ事務が執り行われております。
また、警察署によっては、納付すべき手数料のための収入証紙の購入が、窓口での事務よりも短い時間帯でしかできないところもあります。
愛知県では、「愛知県収入証紙の購入は、警察署内では各地区安全協会が販売しておりますが、各地区交通安全協会窓口によって販売時間が異なっており、購入できる時間が短い窓口がありますのでご注意ください。」とあります。
名義変更について
名義変更は、運輸支局、自動車検査登録事務所などにて行います。
なお、運輸局ではその取扱いがされていません。
これら運輸支局等ではさまざまな事務の取扱いがされていますが、売買・譲渡による名義変更は、通常、自動車の移転登録という手続きとなります。
ほかにも、新規登録、変更登録、抹消登録(一時・永久)という手続きがあります。
自動車の移転登録について
新所有者のお住まいの地域によって管轄の運輸支局等は異なります。
おおかた、新所有者のお住まいの地域周辺を走行している自動車のナンバープレートを確認すれば、その周辺の地域名が判明し、そして、その管轄区域の運輸支局、自動車検査登録事務所が判明するでしょう。
詳細はこちらをご確認ください。
新所有者の管轄を確認し、必要書類一式を準備して、その管轄区域の運輸支局、自動車検査登録事務所へ出向き、移転登録を行いましょう。
ナンバーが変わらない名義変更について
ナンバーが変わらない名義変更というのは、上記の管轄内で自動車の所有者が変更となる場合の手続きです。つまり、同一の管轄内で名義が変更される場合です。
この場合、ナンバープレートが変更とならないため、ナンバープレートの購入、取り付け、封印、返納といった手続きが不要となります。
管轄変更、ナンバー変更を伴う名義変更について
これは、自動車の所有者の変更により、新所有者の使用の本拠の位置が旧所有者の管轄と異なる管轄となり、ナンバー変更が必要となる場合の手続きです。
この場合、ナンバープレートが変更されますので、ナンバープレートの購入、取り付け、封印、返納といった手続きが必要となります。
必要書類について
必要書類は、ナンバープレートの変更の要否に関わらず同一です。
ただ、希望ナンバーがある人は希望番号予約済証が必要となります。
また、書類ではありませんが、ナンバープレート変更に伴い、運輸支局、自動車検査登録事務所内の駐車場でナンバープレートの取り外し及び取り付けを行う際の工具が必要です。
運輸支局、自動車検査登録事務所内で入手するもの
OCR申請書
1号様式のものを使用します。
コンピュータが読み取る太線枠内は修正可能な鉛筆などで記入し、太線枠外で用紙の下部にある氏名・住所などのは黒いボールペンなどで記入します。
手数料納付書
移転登録にチェックをいれ、登録手数料「500」円と記入します。そして、登録手数料印紙500円分を貼付します。印紙は建物内の窓口で購入します。
旧所有者(譲渡人)のもの
自動車検査証
車検証のことです。有効期限内のものが必要です。2023年1月の車検証電子化に伴い、車検証のサイズがA4からA6相当のサイズとなり、記載されている項目が減りました。記載されていない項目については、その情報がICタグに格納されているため、ICカードリーダーかスマホアプリで読み込み確認することができます。
譲渡証明書
車検証(自動車検査証記載事項)の記載を参考に、車名、型式、車台番号、原動機の型式を記入します。
譲渡年月日の欄に斜線がある行(その右側)に譲渡人の氏名又は名称及び住所を記入し、譲渡人印の欄に実印を押印します。
その下の行には、譲渡年月日、譲受人(新所有者)の氏名又は名称及び住所を記入します。実印は押印しません。何度もいいますが、譲受人(新所有者)の実印は押印しません。下記の記載例があっても、口頭で繰り返し説明をしても、この欄に譲受人(新所有者)の実印を押印する人が後を絶ちません。なぜでしょう?
記載例はこちらにあります。
印鑑証明書
発行日が3か月以内のものをご用意ください。
住民票または登記事項証明書
車検証の住所・氏名等が印鑑証明書と異なる場合は提出する必要があります。異ならない場合は不要です。
新所有者(譲受人)のもの
印鑑証明書
発行日が3か月以内のものをご用意ください。
車庫証明書
上記のとおりです。警察署発行、40日以内のものを提出します。
住民票または登記事項証明書
新所有者と新使用者が異なる場合は、新使用者のものを提出する必要があります。異ならない場合は不要です。
行政書士による自動車移転登録(名義変更)の代行の可能性について
封印について
ナンバー変更を伴う名義変更の場合、通常であれば、運輸支局、自動車検査登録事務所にて新しいナンバープレートを取り付けて封印を受けることになります。
手順としては、自動車税申告のあと、ナンバープレートを購入する前に、現在のナンバープレートを取り外して返納をします。そのあと、ナンバープレートを購入し、ご自身でナンバープレートを取り付け、その後、職員さんから封印をしてもらいます。
この封印は、ご自身でするものではありません。
職員さんに取り付けてもらうものですが、取り付ける人は、運輸局からの受託に基づいてその取り付け作業を行っています。詳細は「甲種受託者の名において行う封印取付け作業実施要領」を検索してみてください。
まとめ
自動車の個人売買後の手続き方法については、車庫証明と名義変更の2つ必要なことがわかりました。
そして、ナンバー変更を伴う名義変更の場合は封印を受けなければならないことも判明しました。
これら手続きは、個人で完結することが十分可能です。ただし、書類の準備、窓口での申請などに多くの時間を奪われます。
行政書士は、車庫証明の申請手続き、自動車移転登録(名義変更)、そして封印を代行して行うことができます。
車庫証明の申請手続きの場合、自動車保管場所証明申請書や所在図及び配置図の作成、車庫が他人所有の場合の保管場所使用承諾証明書の代理取得が可能です。
また、管轄の警察署へ出向き、申請書の提出、後日の証明書の受領も代理で行っております。
OCR申請書、手数料納付書の作成、運輸支局、自動車検査登録事務所内での手続き、自動車税申告、そして、ナンバー変更を伴う名義変更の場合の封印を運輸支局、自動車検査登録事務所の外で行うことが可能です。
つまり、行政書士が、対象の自動車が保管されている場所へ出向いて、その場所で封印をすることができます。
行政書士は、封印取付受託者からの委託を受け、封印取付を行うことができます。
封印前の取り付けられている旧ナンバープレートは、先に取り外して手続き中に返納することも可能ですし、封印後の返納でも可能です。
そうすることで、対象の自動車を運輸支局、自動車検査登録事務所へ移動させる必要性もなくなります。
上記のとおり、車庫証明のためには2回警察署へ出向かなければなりません。
名義変更のためには運輸支局、自動車検査登録事務所へ1回出向かなければなりません。
車庫証明の交付(受領)と運輸支局、自動車検査登録事務所での手続きを同日に行ったとしても、最低、2日、時間を奪われることになります。
平日勤務の会社員であれば、この2日のために有給休暇を取得することになるでしょう。
もし、車庫証明や名義変更のために有給休暇を2日取得するのであれば、1泊2日の小旅行のために有給休暇を2日取得したほうが有意義といえるのではないでしょうか?
一度、車庫証明や名義変更の手続きを行政書士に依頼するという選択肢を検討してみるはいかがでしょうか?