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法律 2022/7/18

相続人の不存在

相続人の不存在とは?

相続人の不存在とは、相続人のあることが明らかでない場合をいいます。
例えば、戸籍上相続人となるべき者が見当たらないとき、相続人全員が相続の放棄をしているときなどが該当します。
ただし、遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、「相続人のあることが明らかでないとき」には該当しません。
なお、相続人がいることは明らかであるが、その者が行方不明である場合には、不在者の財産管理または失踪宣告の制度によって処理されます。

相続財産法人

相続人のあることが明らかでない場合には、相続財産の主体があるかどうか不明のため、管理人を置いてその代理人として相続財産を管理することはできません。
そこで、相続財産それ自体が当然に法人になるという擬制を用いることにより、管理人をその法人の代表者とし、この管理人のもとで相続人の捜索および相続財産の管理・清算を行うようにします。

相続財産法人の管理

相続人のあることが明らかでなく法人が成立した場合には、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任し、遅滞なく管理人選任の公告をします。
相続財産管理人は、相続財産法人の代表者であり、また、後日現れるべき相続人または包括受遺者の法定代理人でもあります。
相続財産管理人は、相続財産の管理について不在者の財産管理人と同様の権利義務を負います。
相続人のあることが明らかとなったときは、法人は存在しなかったものとみなされ、相続財産の管理・清算手続きは廃止されます。
ただし、管理人がそれまで行った権限内の行為の効力は失われません。
また、相続人があることが明らかになったとしても、その相続人が相続の放棄をすれば再び相続人のあることが明らかでない状態になるので、管理人の権限は直ちに消滅せず、相続人の法定代理人として、相続人が相続の承認をすることによって管理人の代理権が消滅するまで継続します。

相続財産の清算と相続人の捜索

相続財産管理人選任の公告

家庭裁判所が、相続財産管理人選任の公告をしたあと2か月間は、管理人は相続人の出現を期待して、相続財産の清算を開始せず、相続財産の保全・管理に努めることになります。

債権申出催告の公告

期間内に相続人が現れなかった場合、管理人は、遅滞なく一切の相続債権者・受遺者に対して、2か月を下らない期間を定めて、その期間内に請求の申出をすべき旨を催告する公告をしなければなりません。

権利主張催告の公告

債権申出催告期間が満了すると、管理人は、相続債権者・受遺者に対して弁済を開始します。
また、この時までに、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、管理人または検察官の請求によって、相続人があるならば6か月を下らない一定の期間内にその権利を主張すべき旨を催告する公告をしなければなりません。
この公告は、管理人が相続財産を清算してなお残余財産がある場合にだけなされます。この公告が、最後の相続人捜索の公告となります。
なお、この公告の期間内であれば、債権申出催告の公告の期間内に申出をしなかった相続債権者・受遺者も権利行使が可能です。

相続人不存在確定、相続債権者・受遺者の失権確定

上記3回の公告がなされ、最後の公告期間が満了するまでに相続人である権利を主張する者が現れないとき、または現れても相続を承認しなかったときは、相続人ならびに管理人に知れなかった相続債権者および受遺者は、権利を主張することができなくなります。
この権利の喪失は絶対的であり、特別縁故者への財産分与のあとに残余財産があったとしても、これに対し、権利を主張することはできません。

特別縁故者への財産分与に関する審判

上記までの手続きの結果、相続人となるべき次の者が現れず相続人の不存在が確定すると、清算後残余すべき相続財産は、特別縁故者への財産分与の対象となります。
特別縁故者は、権利主張催告の公告に定めた期間の満了後3か月以内に限り、家庭裁判所に対し、残余財産の分与を請求することができます。
特別縁故者からの申立てを受けた家庭裁判所は、3か月の期間の満了をまって、財産分与の審判の手続きを開始します。このとき、数人の申立人があるときは、審判手続および審判は併合して行われます。
家庭裁判所が、申立人を被相続人と特別の縁故があった者と認定し、かつ相当と認めるときは、清算後残余すべき相続財産の全部または一部を分与することができます。

なお、特別縁故者への財産分与は、相続人不存在の場合に限られ、相続人がいる場合、財産分与は認められません。

国庫帰属

権利主張公告の公告の期間満了後3か月以内に特別縁故者からの財産分与の請求がなく、またはその請求があっても排斥され、もしくは分与されてもなお残余財産があるときは、その相続財産は、一般収入として国庫に帰属し、相続財産法人は消滅します。
この場合には、管理人は遅滞なく管理の計算をしなければなりません。